それなりに貯金があるはずなのに、なぜか漠然とした不安が消えない。そんな感覚はないでしょうか。逆に、そこまで残高に余裕があるわけではないのに、平気な顔をしている人もいます。不安の大きさは、必ずしも口座の残高と比例しているわけではなさそうです。
不安の大きさは、残高の多い少ないでは決まらない
もし不安の正体が単純に「お金が足りないこと」なら、貯金額が多い人ほど安心し、少ない人ほど不安になるはずです。けれど実際には、貯金が十分にあっても落ち着かない人がいますし、余裕がなくても意外と平然としている人もいます。
この矛盾を前にすると、「お金の不安」と「お金の量」は、思っているほど単純にイコールで結べるものではないことに気づきます。では、不安を左右しているものの正体は何なのでしょうか。
人は「わからないこと」自体にストレスを感じる
お金の話から少し離れてみます。待ち合わせで相手の到着時間がわからないとき、なんとなく落ち着かない気持ちになったことはないでしょうか。健康診断の結果を待っている数日間、特に体調が悪いわけでもないのにそわそわしてしまう、というのも似た感覚です。
人は、悪い結果そのものよりも、「結果がまだわからない」という状態にストレスを感じやすい生き物だと言われています。到着時間がわかっていれば待つこと自体は苦になりませんし、検査結果がどちらであれ「わかっている」状態の方が、実は気持ちは落ち着きます。不安の多くは、事実そのものではなく、事実が「見えていないこと」から生まれているのです。
お金の不安も、同じ構造でできている
この構造は、お金についてもそのまま当てはまります。今月あといくら使えるのかがわからない。今の資産が増えているのか減っているのか、なんとなくしか把握できていない。将来のお金がどうなっていくのか、見通しが立たない。
こうした「わからなさ」が積み重なることで、残高の実際の多い少ないとは別のところで、不安がじわじわと育っていきます。逆に言えば、たとえ余裕がある残高であっても、その動きが自分の中で見えていなければ、不安は消えないということでもあります。
「見える」だけで、不安の質が変わる
だとすれば、不安に対処する糸口は、金額を増やすことだけではありません。「見えていない状態」を「見えている状態」に変えることでも、不安の感じ方は大きく変わります。
自分の資産が、大きな流れとしてどちらに動いているのか。それがなんとなくでも見えているだけで、同じ残高でも受け止め方は変わってきます。手間をかけずに資産形成の進捗を可視化する方法で触れたように、進捗が見えること自体に、気持ちを落ち着かせる力があります。細かく管理する必要はなく、ただ「動きが見えている」というだけで十分なのです。
不安をなくすのではなく、「わからなさ」を減らすという考え方
不安を完全にゼロにしようとすると、かえって息苦しくなってしまいます。目指すべきは、不安をなくすことではなく、「わからなさ」を少しずつ減らしていくことです。
そのためには、資産の動きが自然と目に入ってくる状態を作っておくのが近道です。資産の増減が見える家計簿アプリの選び方でも紹介しているように、こうした「見える化」を助けてくれるツールに頼るのも、わからなさを減らす一つの手段です。特別な努力をしなくても、見えている範囲が広がれば、それだけで不安は少しずつ小さくなっていきます。
今日からできる、小さな一歩
お金の不安は、残高が少ないから生まれるとは限りません。多くの場合、その正体は「自分のお金がどう動いているかが見えていないこと」にあります。
まずは金額を増やそうと焦る前に、今の自分のお金の、どこが見えていないのかに目を向けてみることから始めてみませんか。


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